風と土と

震災から9年がたちました。私が民藝に携わるようになったきっかけも9年前にあります。原発事故があり、「風」や「土」の清浄さを考えるようになったときに民藝の品々を見て、自然と調和する美しさと力強さに衝撃を受けました。以降、日本各地の手仕事を暮らしに取り入れていくにつれて「誠実なものを未来に残さねばならない」と思うようになりました。

いま、地球上で起きている問題は温暖化にしろ、ウィルスにしろ、人間の密集する都市生活の発展と自由に移動する交易の結果として起きています。世界中を移動することができ、世界中にサプライチェーンがあり、世界中のものが手に入るようになるということは、世界中で起きている出来事が良いことも悪いことも、これまでより身近なことになり得るということだと思います。

民藝の器について書くとき、「風土」という言葉をよく使います。

風土という言葉は古代中国発祥で元来季節の循環に対応する土地の生命力を意味したそうです。光や熱、風、雨水、土などは土地毎で異なるので生命力に差が生じる。かつて人々はそういった土地の生命力を感じ取り、享受し、活かすことで暮らしをたてていました。工芸、風習など人々に良い影響を与えるものもあれば、風土病といった悪い影響を与えるものもありました。民藝の器も、その地に根ざした人々とその土地独特の風土がなければ成り立ちません。しかし今やその土地独特の材料もシェアできるような世の中になりました。

現在世界では1日に30万便以上の飛行機が離着陸しており、今後20年で倍増すると言われています。その結果何が起きるのか?

確実に言えるのはこれから私たちが暮らし方を変えなければならない、ということだと思います。著書の中で柳宗悦はこんな風に言っています。

「民藝の美の著しい特色は健康性ということに外なりません。美に様々な姿があろうとも、健康美は結局最も多く社会の幸福を約束するものだと云わねばなりません。幸いにも様々な工藝品の中で、一番働き手である民藝品は、必要上一番健康に作られているのです。人間の場合と同じく健全な肉体や精神の所有者でなくば、充分な働きをなすことはできないのです。」- 民藝の性質より

明るい未来への鍵となるのは、なるべく身の回りの健やかなで誠実なものを取り入れる小さな暮らし。その地に根ざした生活。そして何よりも大切なのは惑わされず物事を見定める純粋な目と心。そんな風に感じています。

風と土と” への1件のフィードバック

  1. 暮らしを変えて行く事は、本当に必要か?
    戦後、我々日本人は、より便利に、より快適に、暮らしを変えて来た。しかしながら、そのせいで古き良き物を、沢山失って来たのではなかったか?歳を重ねた事により、得た感覚かも知れない。だからこそ、これ以上失いたくない。今を変えたく無い。

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